自分が誰より傷ついていると思い込んでいる不幸
![冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫) 冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51b-nxPclpL._SL160_.jpg)
- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/08/11
- メディア: 文庫
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基本的にミステリーを読む時は、何も考えず読みます。
結末前に謎を解こうとは思わず、全ての事に疑問を抱かずに読むので、
物語の展開に比例して驚きを持って読めます。
良く言えば素直なんです。悪く言えば、鈍いんです。
今回も物語の終盤で菅原榊って文字を見た瞬間に、時止まりましたねぇ。
時止まって、ページを前へ戻してみたりしましたが・・・まぁ言っちゃ悪いけどそれだけ。別に彼がどうあろうが結末には大して関係ないような気もするし。
デビュー作とのことですが、それにしちゃ超大作でとりあえず長い。
各キャラクターの過去を随所随所で掘り下げるんですけど、そこまでいらないだろ?ってな感じでちょっとひっぱりすぎて後半だれた。
そもそもこの小説はミステリーというか、ファンタジーに近い気がする。精神世界の話。
序盤に「閉じ込められた8人は2ヶ月前に自殺したクラスメートの名前が誰一人思い出せない」という、これのっかれる人だけ着いてきなさいという展開から始まる。
個人的には・・・簡単に言えば8人の中から自殺した人間を絞っていく不幸自慢大会のような、話の進め方もいまいち気分がのらず、最後の最後まで中途半端のまま終わってしまった。
のっかれなかった理由はもうひとつある。
賞を取るだけの実力者なだけあって、作者の技巧的には問題はないと思う。
要は、出てくるキャラクター全てにまったくもって魅力を感じなかった。
台詞の言葉の端々に出る個性や、にじみ出る雰囲気、空気感、時に陰湿な物事の捉え方。そういったものが自分の頭の範疇では理解、対応しきれず若干不快になる感じ。
本を読んでいれば、自分と間逆の捉え方をする人間なんてものは腐る程遭遇する。でも、そこが逆に惹かれるポイントになる事も少なくない。
それが今回はまるでなかった。特に深月、りか、昭彦あたりの目線で読んでる時が無理でして。(作者と同姓同名が主人公っていうのもどうかと思う)こういった小説っていうものは、少なくとも作者の人間性って出てしまうんじゃないかと思っているので、他の作品は読めそうにないなぁ。
それにしては、こんなにも長い小説を断念せずになんやかんや読めましたし、根底はどこまでも暗いであろう話なのにも関わらず、読了後は若干の爽やかささえ感じさせる力は凄いなぁと感心はしました。