na2kox's diary

熱しやすく冷めやすい人間の生産性のないくだらない日々を綴る備忘録です。

春の雪

春の雪 [DVD]

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文学を忠実に再現した映画として完成された作品だと思いました。
日本文学というか、純文学というか、三島由紀夫という作家が位置されている所の空気そのものでしたね。非常に文学的で小説を読んだ感じでした。
煮え切らない終わり方、比喩の多い、現実味のない、どっちともつかずの話って私は苦手ですが、この話はそちら側に位置するようでいてかなり違う。

静寂が漂って映像が美しくて言葉の響きが独特で、日本映画を見たという気持ちになる。こういう映画がもっと浸透されるといいけど難しいだろうね。
好き嫌いは別れるだろうし、退屈に思う人もいるだろうし。
私もこの映画がとてつもなく好きかといえばそういう訳でもないですが、見て損はないと思うし完成されていると思うなー。
「君は〜」からはじまる台詞なんて文学的すぎて結構鳥肌もので笑いそうになったが、そのままに演じさせた意欲に拍手したいですな。清様、おひい様とか・・・!

普通に見れば、男がひねくれものだから禁断の愛になっただけであって、禁断の愛になったからこそ燃え上がり惹かれていくという身も蓋もない恋愛話だろうけど、深読みすればいろいろ考えられるとは思う。
個人的には、自分の奥底の気持ちを試す為に、男が禁断の愛となるまで待ったのかと思った。男がかなり恋愛に対してもひねくれてるけど、私もこっちよりの性格なので感情移入はできた(おひい様より清様視点で見れるってどうなのか)

三島氏がストレートに感じて欲しいと思ってかいたものなのかは知る由もないけど、小説や映画っていうのは、見た人それぞれがいろんな感じ方をするのが面白いもので。
そういうのっていいよな、と改めて感じた映画。