na2kox's diary

熱しやすく冷めやすい人間の生産性のないくだらない日々を綴る備忘録です。

刑事さ。俺に惚れてやがるんだ

レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)

レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)

史上最強の変態イカレ刑事参上。趣味が妄想というやばい馬好きなアウトサイダー。もうセリフというセリフが震える程張り裂けます。「俺がレディジョーカーだ」あたりの妄想っぷりもこの人頭平気だろうかと思いつつも半田にどっぷりフュージョンしていた私は興奮しつつ合田の歪んだ顔をうっすら感じながらニヤニヤするという大層な融合っぷり。半田さんにとてつもない親近感を覚えるあたりもうどうかしています。
その上この人のちょこちょこかいまみれるプライベートな素顔がよい。半田妻の「この頃、ご無沙汰よ」とか「競馬と一緒に心中しろ!(痴話喧嘩にて)」とか妄想癖な上破壊癖のある彼の素がアホで笑える。ちょうどその頃合田が所帯がある半田と自分の違いにちょっとしょんぼりしつつ「そうだ!自分にはヴァイオリンがあるもんね!(違った解釈)」・・・。意味のわからないオチをつけているあたりも笑いのツボを刺激。

後半は合田と半田の片言(例:ソロソロ話ソウカ)の恋文で話が進む。ほぼ日課と化した恋文かきに何にも疑問を感じない合田に、恋文を受け取るたびに鼻息を荒くし「俺に惚れてやがる」と自慢げに言い放つ半田の最終決着。

と変態視線でお送りするとこんな感想になってしまう訳ですが、とても面白い小説でした。後半は焦った感もあった気がしますが。森永グリコ事件をモデルにかかれたということで物語は重厚で、手口が斬新で、刑事内部のリアリティ、現在を感じさせる無気力な人物像、妄想刑事を抜きにしてもかなり面白い内容でした。いろいろ考えましたよ、日の出がどう出るのが一番だったかとか、今の企業に置き当てて何をされたら一番痛いか、とかどの金額まで出すかとか、ない頭フル回転ですわ。やっぱり身内の犯行ってのはいつでもなかなか任意に進むまで恐ろしく慎重でなんとも言えないですな。私は三億円事件も白バイ警官の息子が犯人説が有力だと思ってますよ、自殺したから真相は闇の中。

レディジョーカー側からの小説も読みたいととても思ったんですが、その意見はあまり聞かないすね。外伝みたいなのでも。物井のじいさんとか高とかヨウちゃんとか布川さんとかレディとか好きなんですよ。まぁどうせ妄想妄想また妄想の変態(半田視点限定)な感じになりそうでそれはそれで怖い。